ラジオNIKKEI「ザ・マネー マーケットプレミア」を聞いた

特別ゲストに個人投資家の五月さん(片山晃さん)が出るということで標題のインターネットラジオを聞いた。自分は相場から退場してもう何年にもなるが(いつ思い出しても当時の自分の愚かさを恥じてしまう)、株式市場や個人投資家に対する世間的な注目の高まりもあり、最近は当時を懐かしむ機会が増えたように思う。今日ラジオを聞こうと思ったのも、老人が灰色の思い出を鮮やかな絵の具で塗り潰そうとするような動機からである。しかし、結果的には非常に刺激を受けることになった。特に印象に残ったのは次の二つの話である。

 

一つ目は、どんな株が大きく上昇するかという質問が出た時の話だ。五月さんは苦笑いしながらも「過去に大きく成長した株のチャートを見れば良い」というアドバイスをしていたのだが、その後ぼそりと「これ大ヒントだと思うんですけどね…」と言っていたのが心に刺さった。この大ヒント、もちろん初心者や株式投資の本を全く読まずに実地で訓練している人には文字通りの大ヒントかも知れない。しかしほとんどの投資家にとって、このアプローチは王道であり、少なくとも文字通りの大ヒントではない。

 

では何が大ヒントなのか。

 

ここには確かに大きなヒントあるいは示唆が含まれている。つまり、株式市場に挑戦する多くの投資家は(おそらくラジオを聴いた直後ですら)このアプローチを実践しないということだ。何故か。面倒で時間がかかるからである。人と違うことをするのが投資で儲ける秘訣だとはよく言われているが、ある意味で「やって当たり前」の努力・研究を続けることが、他の投資家との差別化に繋がるとまで言えるかも知れない。

 

ここでは大上段から書いたが、自分も株式市場に挑戦していた時、一般的なテクニカルの勉強ぐらいはしたものの、個別株のチャート研究などほとんどしたことがなかったことを告白しなければならない。根が面倒くさがりな上、当時は勉学が本業という最高の言い訳まであった。自分からの逃げ足だけは一流であるに止まらず、そのことに屈折した誇りさえ持っていた自分に真剣な姿勢が欠如していたことは明々白々である(さらに愚かしいことに当時の自分はそのことにすら気付いていなかったのではないか、と思える)。ちなみに五月さんの著書「勝つ投資 負けない投資」にも同様のことが書かれている。僕はこの本を読んだ時、導入には良いと思った一方で、多少なりとも勉強することを目的として購入する読者を想定しているであろう本の主題が「(自分で考えて)勉強しろ」であるということにやや肩透かしを食った思いがしたものだ。自分は勉強することを目的として購入したわけではなかったのでまあいいかと思ったのだけれど、今日ラジオを聞いて「自分で考えて勉強すること」が複数の意味合いでどれだけ難しいか、そしてまたどれだけ価値があるかを改めて理解できたように思う。

 

一つ目が長くなってしまったが、聞いていてハッとした二つ目の話。個人的にはこちらの方が印象深い。前後の文脈は忘れてしまったが、確か中長期投資で、5年かけて100万円を5倍の500万円にするという仮定の話を五月さんが始めた。税金を引くと手元に残るのは420万円という説明で場が和やかになったことも一つ目の話を補強する上で示唆的だが、そんなことよりその後に五月さんが言った言葉が衝撃的だった。

 

「それじゃあ人生変わんないんですよ」

 

人生を変えることを夢見て相場に挑戦する人間は少なくないと思う。笑えないことに当時の自分もそうだった。しかしこの言葉が真面目な音を伴い、生きている人間の口から実際に出てくるのを自分は初めて聞いた。真剣に人生を変えようとする意志、あるいは人生を変えるほどの意志の真剣さこそ、相場に、あるいは何であれ自分の夢に挑戦する人間の持つべき最良かつ唯一真当な姿勢ではないだろうか。そしてまたその姿勢こそが、後に続こうとする人間に夢の手触りを感じさせるのだ。